
パールネックレスの選び方と着用ルール
真珠ネックレスといっても、その種類は様々です。 ここでは、そんなパールネックレスをについて、 前半では「違いによる選び方」とに注目して、後半では「着用ルール」に注目して解説していこうと思います。
一粒のネックレスはペンダントと呼びます
一粒だけぶら下がっている写真のジュエリーもネックレスと呼ぶこともありますが、 厳密には、一粒だけのジュエリーは「ペンダント」です。
正式な場面で使われるのは、真珠がたくさん連なったネックレスです。 ペンダントはカジュアルな場面で使われることが多いです。
この記事では、真珠がたくさん連なった「ネックレス」について説明していきます。
真珠ネックレスの違いと選び方
ここでは、パールネックレスを購入する際に考えるであろう、様々な視点から分類して解説していきます。
長さで選ぶ
ざっくり分けると、「チョーカー(ショート)」と「ロング」「2連3連多連」の3種類です。
- 入学式、卒業式、お葬式などのきっちりした場面で使われるのが、40cm前後のチョーカー。
- 結婚式やパーティーなどで華やかに使われるのがロング。
一般的にネックレスといえば、40cmくらいのチョーカーを指すことが多いです。
チョーカー(ショート)とロングのどちらを選ぶか、で迷われるのあれば、 1本目は定番のチョーカー(ショート)を選ぶことをお勧めします。
ロングはキッチリとした場面では使えないこともあるので、二本目以降がオススメです。
それぞれについて説明します。
チョーカー(ショート)のパールネックレス
40cm前後の長さです。きちんとした場面で使われることが多い長さです。
使われる方の首元にあわせて微調整をすると、綺麗に着用できます。 スリムな方は38cm、ふくよかな方は45cmなど、最大で10cmくらいの微調整を行います。
ロングのパールネックレス
60cm以上のネックレスは、ロングに分類できます。 チョーカー(ショート)に比べると、遊びの要素が強く、パーティーなどに使われます。
- 60cm(マチネー) 胸元あたりまで垂れる長さ。クラシカルな雰囲気。
- 80cm(オペラ)お腹の中ほどまで垂れる長さ。現代ではロングの定番。
- 120cm(ロープ)腰の下あたりまで垂れる長さ。2連に巻いたり結んだりして使用。
詳しくは、下記の記事をご参考下さい。
2連3連多連のパールネックレス
2連、3連など、パールを重ねた形で作ったネックレス。かなり華やかな印象が出ます。
使用シーンが限られるため、現在ではあまりメジャーではありません。
重ねて使いたい場合は、ロングネックレスを重ねて2連用のようにして使うことが多いようです。
真珠の種類で選ぶ
真珠とは生物である貝から生み出された宝石です。元となる貝には様々な種類があります。 元となる貝が違えば、見た目も違います。
色々な真珠の中でも、定番のパールネックレスといえば、日本国内で生産されるアコヤ真珠です。
それまで極々限られた王族貴族のものだった真珠が、世界中の一般の人々の身に付けられるようになったのは、 明治時代の日本で、アコヤ真珠が養殖生産され始めたのが始まりです。
その後、様々な種類の真珠が養殖されるようになりましたが、 今でも、世界の真珠のスタンダードスタイルは日本の養殖真珠を元にしています。
そのスタンダードスタイルを元にして分類すると、以下のような印象があるかと思います。
アコヤ真珠のネックレス
結婚式、入学式、卒業式、お葬式。きちっとした場面で使われる、日本の伝統的なジュエリーです。きめ細かく奥深いテリ(輝き)が魅力。
特徴
3mm〜10mm程度の比較的小粒な大きさ。真円が主で、ホワイト系の色あい。
印象
- キッチリ 清楚
- ファーストパールの定番
タヒチ黒蝶真珠のネックレス
孔雀の羽色のピーコックカラーが有名。お葬式で使われることが多いですが、大人でラグジュアリーな感じで使うと良いかと思います。
特徴
いわゆる黒真珠。自然と黒い色が出る。10mm以上の大粒が主。
印象
- お葬式で使われることが多い。
- 明るいピーコックはゴージャス感。
南洋白蝶真珠のネックレス
大粒でシャイニーな輝きが魅力。ゴージャスに身につけるのであれば、アコヤより断然南洋白蝶が良い。派手なのでお葬式には避けた方が無難。
特徴
大粒の真珠が多い。アコヤに近い色だが金属的な輝き。強い黄色はゴールドと呼ばれる。
印象
- 大粒ピカピカでゴージャス
- マダム感 セレブ感
池蝶淡水真珠のネックレス
形のいびつなバロックが多い。様々な色あり。近年はきれいで高価なものもある。湖水真珠とも呼ばれる。
印象
- 安価
- カジュアル 日常使い
解説
安価なため、日常使いに惜しみなく使えます。それゆえに、キッチリした場面では安っぽいかも。結婚式やパーティーでは、重ね付けしたり、他と組み合わせて使うと良し。
色で選ぶ
一般的には、ホワイト系の真珠がイメージしやすいかと思います。
パールネックレスの基本はホワイト系ですが、 現在では、ブラック、ゴールド、ピンクなど、様々な色の真珠があります。
それぞれの色のネックレスの特徴を解説します。
ホワイト系のパールネックレス
アコヤ真珠のホワイト系ネックレス
定番のホワイトパール。8mm程度の適度な大きさで、うっすらとピンクが入る。
南洋白蝶真珠のホワイト系ネックレス
ビッグサイズでゴージャス。アコヤ真珠より金属的な輝き。グレー系が多い。
淡水真珠のホワイト系ネックレス
カジュアルによく使われる。小さなサイズ、歪な形のバロックが多い。
ブラックのパールネックレス
タヒチ真珠のブラック系ネックレス
ナチュラルカラーで黒い色が出る。10mm以上のビッグサイズが多い。レッド系(茶色系)やグリーン系の干渉色が多い。グリーンの強いものはピーコックと呼ばれる。 着色をしない黒真珠では、このタヒチ真珠ネックレスが最も一般的です。
アコヤ着色のブラック系ネックレス
アコヤ真珠を着色して黒真珠にすることもあります。現在ではあまり見かけませんが、時々出回るので、ご注意下さい。
グレーのパールネックレス
アコヤ真珠のグレー系ネックレス
異物の混入により暗いブルーの色になったアコヤ真珠。グレーもしくはブルーと表現されます。かなり濃い色合いでも黒色にはなりません。 色の薄いグレー系アコヤ真珠は、白とあまり変わらないので、できるだけ濃い色を選ぶことをお勧めします。 タヒチよりも優しい色で、サイズも小さく、お葬式でも使いやすいネックレスです。
タヒチ黒蝶真珠のグレー系ネックレス
タヒチ黒蝶真珠でも、色の薄い真珠はグレーになります。アコヤ真珠よりはっきりとした色です。 10mm以上の大粒の真珠が一般的。お葬式でも一般的に使われます。
南洋白蝶真珠のグレー系ネックレス
南洋白蝶真珠でもグレー系の真珠ができます。10mm以上のビッグサイズが多い。 派手な印象の真珠が多いので、お葬式用として使われることは少ない。
ゴールドのパールネックレス
南洋白蝶真珠のゴールドパールネックレス
濃いイエローの色と、ごく強い輝きをあわせ持つ南洋白蝶真珠を、ゴールドと呼びます。 10mm以上の大粒の真珠が多く、華やかなイメージの真珠です。 ゴールドパールといえば、南洋白蝶真珠が一般的です。
アコヤ真珠のゴールドパールネックレス
アコヤ真珠にも、濃いイエローと強い輝きをもつ真珠は、ゴールドと呼ばれます。 アコヤ真珠はしっとりとした輝きですので、華やかさは南洋白蝶真珠に劣ります。 8mm程度の小粒の真珠がメインです。
ピンクのパールネックレス
アコヤ真珠の着色(調色)ピンク
アコヤ真珠は着色(調色)を行うことが一般的です。強い着色(調色)が行われた真珠では、はっきりとしたピンク色になります。 以前は強いピンク色が人気でしたが、近年ではナチュラルな無調色もよく知られています。
ピンク系の真珠は、日本人の肌に馴染みがよく、身に付けると色が目立たなくなるので、 アコヤ真珠のピンクであれば、お葬式にも問題なく着用することができます。
アコヤ真珠のナチュラルピンク
着色(調色)を行っていない無調色の真珠にも、ピンク色の輝きが見られます。 うっすらとしたピンクなので、着色(調色)に比べて控えめな色あいです。
ナチュラルな上品な色あいですので、お慶びごと、ご不幸ごと、 フォーマルな場面に最適なパールネックレスです。
調色と無調色の違いについては、下記の記事で詳細しております。
淡水真珠のピンクパールネックレス
地色にはっきりとしたピンクの色がついた真珠です。3mmの小粒から10mmを超える大粒まで、様々なサイズがあります。 形の歪なバロックが多く、安価なので、カジュアルに身に付けられます。 淡水のピンクは鮮やかな色なので、お若い方が、結婚式などの華やかな場面で着用することが多いようです。
マルチカラーのパールネックレス
南洋真珠、タヒチ真珠など、様々な真珠を組み合わせて作ったカラフルなネックレス。 主に華やかな場面で着用します。ご不幸ごとでの着用はNGです。
価格で選ぶ
予算を決めて何を買うかを決めることは、現実的であり、賢い選び方だと思います。
ここでは、価格帯ごとの、品質の目安を解説していきます。
一般的に、予算毎で選ぶことができるであろうパールネックレスを解説しようと思います。
1万円以下のパールネックレス
フェイクパール
コットンパール、貝パールなど、本物に似せた偽物のパールネックレス。 安価に、フォーマルネックレスの代用として、気軽に購入することができます。
予算が少ない場合は、低品質の真珠を買うより、フェイクパール等を選択するが良い場合もあります。
1万円以下の淡水真珠ネックレス
1万円以下の予算でも、淡水真珠であれば、本物の真珠を手に入れることができます。
ただ、サイズが小さかったり、歪な形であったりすることがほとんどです。
安価な淡水真珠は、アコヤ真珠のフォーマルネックレスの代わりにはなりません。 ファッション的に使う、アクセサリーとしての使用をオススメします。
5万円〜10万円程度のパールネックレス
アコヤ真珠、タヒチ黒蝶真珠、南洋白蝶真珠などでも、5万円〜10万円程度のネックレスは存在します。 ですが、品質の低いものがほとんどなので、あまりオススメできません。
10万円〜20万円程度のパールネックレス
アコヤ真珠、タヒチ黒蝶真珠、南洋白蝶真珠などで、一定の品質のパールネックレスが購入可能です。 最高品質というわけではありませんが、上手に選べば一生ものの品質の真珠が手に入ります。
30万円程度のパールネックレス
最高品質のパールネックレスが購入可能な価格帯です。 特別大きなサイズでなければ、アコヤ真珠、タヒチ真珠で最高品質のものを選ぶことができます。
50万円以上のパールネックレス
アコヤ真珠ネックレスでは、50万円以上のネックレスはめったにありません。 例外があるとすれば、9mm以上のネックレス、二本分の素材を使うロングネックレスなどです。 もし50万円以上のアコヤ真珠ネックレスを見かけたら、なぜそんな価格なのか一考することをオススメします。
タヒチ黒蝶真珠、南洋白蝶真珠のネックレスであれば、100万円クラスのネックレスも多く存在します。
真珠ネックレスの着用ルール
どこの場面で、どのパールネックレスを着用すれば良いのか?割と悩む問題だと思います。
ここでは、パールネックレス を使う「着用シーン(どこで)」に注目していきます。
日本において、フォーマル(正式な)服は大きく2種類に分けられます。
- 不幸ごとに使うブラックフォーマル
- 喜びごとに使うカラーフォーマル
この2種類を、いくつかのシーンに分類して、解説していこうと思います。
正式なブラックフォーマル(正喪服)
お葬式で着用するいわゆる喪服。現在では、お通夜も正喪服を使用することが多いようです。
洋装では、何かしらのジュエリーをつけることが正式です。 派手なものは避け、故人への敬意を表すしめやかなジュエリーを身に付けましょう。
胸元にぴったりとあった、白黒グレーの大きすぎないパールネックレスが最適です。 一緒につけるパールイヤリングやパールピアスは、揺れないタイプで、ダイヤが入っていないものを選びましょう。
結婚指輪以外の指輪の着用は避けた方が無難ですが、 パールの指輪は、ネックレスとセットになるシンプルなものでしたら着用可能です。
装い
正式な喪服、ブラックフォーマルドレス
相性の良いパールネックレス
- アコヤ真珠(全ての色)
- タヒチ黒蝶真珠(14mmまで)
相性の悪いパールネックレス
- 南洋白蝶真珠
- ロングネックレス
- 2連のネックレス
- ステーションネックレス
ゆるやかなブラックフォーマル(準喪服/略喪服)
三回忌以降(一般的には七回忌から)の法事や、急な弔いなどに使用します。 グレーや黒のワンピースや、パンツスーツなどが着用可能。
正喪服と同じく、派手すぎるジュエリーは避けた方が無難です。
装い
喪服、黒のワンピース、黒のスーツ
相性の良いパールネックレス
- アコヤ真珠(全ての色)
- タヒチ黒蝶真珠(14mmまで)
相性の悪いパールネックレス
- 南洋白蝶真珠
- ロングネックレス
- 2連のネックレス
- ステーションネックレス
正式なカラーフォーマル(正礼装)
最も格調高い服装。式典やパーティーなどに使用します。 男性であればタキシードや燕尾服などを着用する場面です。
昼と夜は別の服装にすることがマナーです。 昼はワンピーススーツなどに小さめのジュエリーで、比較的上品な装いをします。 夜はロングドレスなどに光り輝くジュエリーを使って、華やかな装いをしましょう。
具体的なシーン
- <昼> 一流ホテルの結婚式、披露宴、記念式典など
- <夜> 公式の晩餐会や着席式の祝賀パーティー
装い
- <昼> 肌を見せないアフタヌーンドレス、ワンピース
- <夜> 袖なしで肩を出したイブニングドレス
相性の良いパールネックレス
- アコヤ真珠(ホワイト)
- アコヤ真珠(ピンク)
- 南洋白蝶真珠
- ロングネックレス
- 2連のネックレス
相性の悪いパールネックレス
- 淡水真珠
ゆるやかなカラーフォーマル(準礼装)
正礼装ほどかしこまらないけれど、タウンウェアとは違った、エレガントな装いです。 ワンピースやスーツなどに、パンプス、バッグ、そしてアクセサリーを身に付けるのがマナーです。 男性であればブラックスーツを身に付ける場面です。
入学式や卒業式や同窓会など、比較的着用頻度が高いフォーマルです。
装い
- ワンピース、アンサンブル、スーツなど
具体的なシーン
- レストランウェディング
- 入学式、卒業式
- 同窓会
- 結納
相性の良いパールネックレス
- アコヤ真珠(ホワイト/ピンク)
- タヒチ黒蝶真珠
- 南洋白蝶真珠
- ロングネックレス
- ステーションネックレス
気軽なカラーフォーマル(略礼装)
少し特別なお出かけに身に付ける服装です。観劇やお食事会などの時に身に付けます。 上品なタウンウェアを使うことも可能です。 男性であれば、ファッションスーツを身に付ける場面です。
装い
- ワンピース、スーツ、パンツなど
具体的なシーン
- 発表会
- 観劇、歌舞伎、演奏会
- 食事会
相性の良いパールネックレス
- アコヤ真珠(ホワイト/ピンク)
- タヒチ黒蝶真珠
- 南洋白蝶真珠
- 淡水真珠
- ロングネックレス
- ステーションネックレス
まとめ
以上、パールネックレスの様々な種類を見てきました。
総合的に見て、日本産アコヤ真珠の、ホワイト系で首元に沿うチョーカータイプが万能に使えるかと思います。
このアコヤ真珠ホワイト系チョーカーは、皇室の方々にも愛用されている定番のジュエリーです。
なお、急ぎの法事などで急にパールネックレスが必要になった場合、 偽物のフェイクパールで間に合わせてしまうことも、アリだと思います。
品質の低いパールネックレスは、輝きが劣ります。 宝石に詳しい人にとって、偽物を見分けることは難しいですが、低品質の真珠を見分けることは簡単です。
時間をかけても、一生に一本の、満足できる品質のパールネックレスを選んで頂ければと思います。
参考文献
『大人の礼服とマナー』文響社,2018
清家壽子『フォーマルウエア講座』繊研新聞社,2002
アメリカ宝石学会公認鑑定士(GIA.G.G.)
Gemological Institute of America Graduate Gemologist
ダイヤモンド卸、宝飾メーカー勤務を経て、創業60年の老舗、井上真珠店に勤務。現在は暖簾分けされた宇和島イノウエパールの代表。
パール専門小売店にて「お客様一人一人と向き合う接客」をモットーに、お客様の希望や体型をヒアリングの上、仕入れから最終仕上げまでを行い、累計1,000本以上のネックレスを販売してきました。