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真珠の傷について | 傷は直せる?エクボと傷の違いとは?

真珠は生き物が生み出す宝石であり、工業製品ではないので、傷のある真珠が大部分をしめています。

ここでは、真珠の傷はどうやってできるのか、傷をつけない方法、傷の直し方などについて解説していきます。

真珠の傷とは

真珠の傷

真珠のキズは、大きく分けて3つの種類があります。

  1. 自然にできた傷
  2. 製品に加工する過程でできた傷
  3. 後天的に硬いものにあたってできた傷

自然にできた傷

真珠が成長する過程で生まれた、表面の凸凹やシワが、真珠の傷です。
ごく小さいものは問題ないですが、小さくても複数あったり、大きい傷は、小キズ中キズ大キズとして評価されます。

製品として店頭にならんでいる真珠の傷は、ほとんどが自然にできた傷です。

製品に加工する過程でできた傷

真珠層内部の異物を取り除く加工処理の際、真珠の内部が、薬品によって傷ついてできたもの。
白濁して見えたり、光を透かすとヒビ割れが見える場合があります。

通常は製品化されませんが、ごく安価な真珠に使われる場合もありますので、ご注意下さい。

後天的に硬いものにあたってできた傷

真珠は硬度が低いので、固く尖ったものでひっかくと傷ができます。

店頭に並ぶ商品にはありえない傷ですが、保管や持ち運びの際にできてしまう場合もあります。

真珠の傷の評価基準

現在のところ、真珠の評価に統一的な基準はありません。

業者によって基準はバラバラで、ある業者にとっての小キズは、ある業者にとっての大キズであったりということがありえます。

ですが、良心的な業者のあいだでは、大体下の図のような基準が当てはまるのではないでしょうか。

真珠の傷の評価基準例

大事なこととして、ネックレスに使われる基準は若干ゆるく、指輪やイヤリング・ピアスやペンダントに使われる基準は厳しめになっていることです。

ネックレスは50個程度の真珠を使用しているので、全体を印象的に評価します。よって細かい傷は無傷として扱います。
一方、指輪やイヤリング・ピアスやペンダントは、1つか2つの真珠しか使わないので、厳密に評価をします。

エクボと傷の違い

真珠の傷を「エクボ」と呼ぶ販売業者もいます。
「傷」というと印象が悪いですが、「エクボ」と呼ぶとポジティブなイメージがでるので、販売の際に使うことがあるようです。

実際には、傷をエクボと呼ぶことは不正確ですので、良心的な業者は「エクボ」という言葉を使うことはないと思います。

真珠の傷はルーペで見る?

真珠の傷を見るのに、ルーペを使うことはありません。
真珠は、鉱物と違って表面がなめらかではないので、ルーペで拡大すると、すべて傷にみえてしまうからです。

ダイヤモンドなどの宝石は、一般の方でも、ルーペで傷を確認することがありますが、真珠については、プロでもルーペは使いません。
真珠の傷は肉眼で見えるものを対象とします。

品質劣化につながる傷

通常の傷は、真珠の成長過程で生まれた凸凹やシワなので、その傷が原因で真珠全体が劣化することはありません。

ですが、加工傷などの大きくて目立つ傷は、長年の使用により、その傷が原因となって真珠全体が劣化することがあります。

あまりに大きい傷がある真珠は、購入を避けた方が無難です。

傷は直すことができるか

後天的についた傷は、研磨して目立たないようにすることができます。

ただ、研磨による直しは、厳密に傷を評価する指輪か一粒ペンダントにたいして行われることが多く、
印象的に傷を評価する、真珠ネックレスにたいして行われることはほぼありません。

販売商品としての真珠に対して、傷直しの研磨をすることは、
詐欺的行為とみなされかねないので、普通の業者は行いません。

真珠は傷がつきやすい?

真珠は、普通に使っている程度で傷がつくことはありません。

真珠のモース硬度は3.5(ダイヤモンドは10)で、
比較的柔らかい物質なので、固く尖ったものでひっかくと、傷がつくことがあります。

ただ、多くの方がイメージするよりも丈夫で、落としたりぶつけたりしても、傷がつくことは少ないです。
割れや欠けが発生する確率も、他の宝石より少なくなっています。

(真珠に割れや欠けが少ないのは)球体で、薄層からなる多層構造により弾力性があるためです。
弾力テストによると、真珠を70cmの高さから落とした場合、約40cmもはね上がった結果があります。

『えひめ発 真珠ものがたり』中国四国農政局愛媛統計情報事務所 編 愛媛農林統計協会 より引用 カッコ内は著者による

傷をつけない対策

首元に沿う長さのネックレスの場合は、硬いものにぶつかることはあまりないので、着用した際に傷がつくことは、ほぼありません。

ただ、持ち運びや保管の際、他のものと擦れて傷がつくことがあります。

とくに、他のジュエリーと一緒の袋に入れて持ち運びをして、傷がつくことが多いので、 真珠製品を持ち運ぶ際は、かならず一点づつ袋にいれて持ち運びをするようにして下さい。 (ネックレスとセットのイヤリング・ピアスも別々の袋に入れたほうがベターです。)

また、指輪の場合は、家具の端などにぶつけて傷がつくことがあるので、着用時も注意が必要です。

古い真珠の傷は汚れの可能性もある

真珠を使っていくと、汗や汚れが付着して乾燥し、傷のように見えることもあります。

「使っているうちに傷だらけになっちゃった!」といって真珠のメンテナンスをご依頼されることがありますが、 大抵の場合は、汚れの付着が原因です。

以下のような対策で、きれいになる可能性があります。

  • 軽度の場合は、柔らかい布で丁寧に拭く
  • 中度の場合は、研磨剤入の専用クロスで拭く
  • 中度から重度で、汚れが全体に広がっている場合は、パールリフレッシャーで磨く

注意点として、水を使うと、真珠が劣化する恐れがあるので、水洗いは避けて下さい。

まとめ

真珠は生物が生み出す宝石であり、ダイヤモンドなどの鉱物と比べると、表面に傷は発生しやすいです。
数多くの真珠を使うネックレスであれば、花珠や天女の高級品でも、若干の傷はあるので、あまり気にしすぎないことも大事だと思います。

真珠は、数多くの真珠層を経て反射する、複雑な輝きを楽しむ宝石です。

予算が限られている条件であれば、「傷がなくて輝きがない真珠」よりも、「傷があっても輝きが美しい真珠」を選ぶことをおすすめします。

以上、真珠の傷について解説してみました。ご参考になれば幸いです。

参考文献

『真珠事典 真珠、その知られざる小宇宙』小松博 監修 繊研新聞社
『えひめ発 真珠ものがたり』 中国四国農政局愛媛統計情報事務所 編 愛媛農林統計協会