真珠科学研究所の鑑別書に偽物はある?同じ花珠で値段が違う理由を専門店が解説
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真珠科学研究所の鑑別書に偽物はある?同じ花珠で値段が違う理由を専門店が解説

「真珠科学研究所の鑑別書には偽物があるらしい」——そんな情報を目にして、不安になってここへ来られた方が多いと思います。

このページでは、1965年創業・宇和島の真珠専門店が、次の3つにお答えします。

  • 鑑別書・鑑定書の「偽物」に当たる心配は、どれくらい必要か
  • 同じ「花珠」なのに値段が全然違うのはなぜか(偽物だから、ではありません)
  • 購入前に確認したいチェックポイント

先に1つ目の答えをお伝えします。屋号を上げて営業している真珠専門店から、第三者機関発行の鑑別書・鑑定書付きで買う限り、偽造書類に当たる確率は極めて低いです。

そして、「安すぎるから偽物では?」という疑いの多くは、偽物のせいではなく、「花珠」という言葉の中身に幅があることから来ています。同じ「花珠」の鑑定書付きなのに、お店によって値段が全然違う——実店舗でお客様からいちばん多くいただく質問でもあります。

この価格差の仕組みから、順に解いていきます。偽造・すり替えの具体的な話は、後半の「偽造・すり替えの心配は、どれくらい必要か」で詳しく扱います。

目次

同じ「花珠」なのに値段が違う5つの理由

「百貨店で見た花珠と、ネット通販の花珠、値段がまったく違うんだけど」——。

答えを先に言うと、「花珠」という言葉が同じでも、中身が同じとは限らないからです。

理由は大きく5つあります。

理由1:発行している鑑定機関が違う

そもそも「花珠」という名称には法的な定義がなく、極端に言えば誰でも名乗ることができます。

実際、業界団体である日本真珠振興会も、統一された品質基準のないまま様々な品質のアコヤ真珠が「花珠」として扱われている現状に対し、「花珠鑑定・鑑別があること」だけをもって最高品質と説明しないよう、小売店に注意喚起を出しています。

数ある鑑定機関のうち、信頼して参考にできるのは「真珠総合研究所」と「真珠科学研究所」の2つです。この2社以外が発行した鑑別書・鑑定書は、参考にしないことをおすすめします。

なかでも「オーロラ花珠」は真珠科学研究所が取得した特許名称で、この名称が使われている時点で、一定の品質検査を通過した証明になります。

なお、お店が独自に発行する「品質証明書」のようなものは、客観性の裏付けがないため、鑑別書・鑑定書とは別物として扱う必要があります。

値段を比べる前に、まず発行機関名を確認してください。同じ土俵に乗っていないことが、意外なほど多いのです。

花珠そのものの定義や由来については、こちらで詳しく解説しています。

理由2:ランクの名前が紛らわしい

信頼できる2機関の中でも、ランク名はよく似ています。

真珠総合研究所の「花珠」と、真珠科学研究所の「オーロラ花珠」は、発行機関も基準も異なる別のランクです。

真珠科学研究所の鑑別鑑定書。特別呼称欄に「オーロラ花珠」と記載されている
ランク名は鑑定書の「特別呼称」欄に記載される(真珠科学研究所「オーロラ花珠」の例)

さらに、名前のよく似た「準花珠」(真珠総合研究所)というランクもあります。

準花珠は、花珠の一つ下のランクです。当店でも主力の一つとして扱っており、花珠とは別のランクとしてご案内しています。

ランクが一つ違えば、価格が違うのは自然なことです。比較のときは、鑑定書のランク名を一字ずつ確認することをおすすめします。

理由3:調色か、無調色か

調色(着色処理)は真珠の伝統的な加工で、調色された真珠でも花珠には合格します。

ただし、自然のままの色で美しさの基準を満たす無調色の真珠は数が少なく、その希少性のぶん価格は高くなります。

同じ「花珠」でも、調色と無調色では価格が変わって当然なのです。鑑定書の備考欄を見れば確認できます。

鑑定書の備考欄。「着色の痕跡を認めません」「真珠層固有のナチュラルカラーであることを認めます」と記載
無調色の場合、備考欄に「着色の痕跡を認めません」と明記される(真珠科学研究所の例)

理由4:同じ「合格」でも、ぎりぎりと余裕がある

見落とされがちですが、これが価格差のいちばん大きな理由かもしれません。

花珠の鑑定書は「一定の品質基準をクリアした」という証明であって、合格した真珠がすべて同じ品質というわけではありません。

余裕をもって合格する真珠もあれば、基準ぎりぎりで合格する真珠もあります。

真珠は自然が生み出す宝石で、工業製品のように「同じ型番なら同じもの」ではありません。1本1本に個性があり、品質が上がれば上がるほど、わずかな差が大きな価格差になります(ダイヤモンドのVSとVVSの関係に似ています)。

ただ、当店の経験では、鑑定基準は年々見直されており、近年はより厳格で安定してきています。

また、以前の基準で合格した在庫が、現在の合格品と同じ品質とは限らない、という点も知っておいて損はありません。

理由5:真珠「以外」の部分が違う

意外に差がつくのが、真珠そのもの以外の部分です。

クラスプ(留め具)やイヤリング・ピアスの金具、ケースの質。そして、糸替えや長さ調整といったアフターサービスの有無。

真珠ネックレス用のジュエリーケース
ケースや金具の質も、価格に含まれている

価格を抑えたお店では、金具やケースが選べず、簡素なものが付いてくることが一般的です。アフターサービスがそもそも用意されていないこともあります。

一生ものとして長く使うなら、この「真珠以外の部分」まで含めて価格を比べてみてください。

この章のまとめ:「花珠かどうか」ではなく「どんな花珠か」

以上をまとめると、確認すべきは「花珠かどうか」ではありません。

どの機関の、どのランクで、調色か無調色か、どんな仕立てとアフターサービスが付いた花珠か。

ここまで見て初めて、値段の意味が分かります。

「書類より、お店選び」は半分だけ正しい

「機関ごとに基準が違う」「キズや形の評価に偏って、真珠の命であるテリが軽視されがちだ」「自然が生んだ宝石の多様さを、書類1枚で語れるはずがない」——。

真珠業界の中には、鑑定書に批判的な意見も少なくありません。その主張を突き詰めると、こうなります。

真珠の目利きができているお店を探すことが大事であり、第三者の鑑定書は要らない——。

もっともな指摘も含まれていると、当店は考えています。

しかし、お店の目利きと第三者の鑑定書は、どちらかを選ぶものではなく両輪だ——当店はそう考えています。

「信頼できるお店から買うことが大事」。これは半分正しいと思います。真珠は最後は人の目利きで選ぶものだからです。

では、残りの半分は何でしょうか。

その店の目利きが確かかどうかを、誰が確かめるのか、という問題です。

世界的なブランドであれば、ブランドの名前そのものが品質の保証として機能します。しかし、それ以外のお店では——当店を含めて——自社の基準を第三者が客観的に確認する仕組みが必要だと考えています。

それこそが、鑑定機関の本当の役割です。

なお、「テリが軽視されがち」という指摘に対しても、鑑定の世界は進化を続けています。近年は、テリの美しさを最優先し、表面のわずかなキズや形には幅を持たせる評価軸も生まれました。当店自身も、テリを最優先に真珠を選んでいます。自分の顔が鮮明に映り込むほどのテリこそ、真珠が宝石である理由だからです。

イノウエパールの姿勢——二重の基準

当店は1965年創業から60年以上、三代にわたって真珠と向き合ってきました。

正直にお話しすると、当店もかつて「鑑定書はなくてもよいのでは」と考えて販売していた時期があります。

しかし「やっぱり鑑定書がほしい」というお客様の声が多く、お客様の立場に立てば当然のことだと考え直しました。

以来、当店の品質保証は、2つの段階を踏んでいます。

  1. 正当なルートから仕入れた真珠を、まず自社の基準で選別する。
  2. そのうえで、第三者の鑑定機関に審査してもらう。
真珠専門店の店主が真珠ネックレスの連を選別している様子
仕入れた真珠を、まず自社の基準で1本ずつ選別する

自社の基準で選び、第三者の目で確かめる。この二重の基準を通った真珠だけを、お客様にお届けしています。

先に自社の目で選び抜いてから鑑定に出すので、基準ぎりぎりの真珠を仕立てて売る、という発想がそもそもありません。

さらに当店では、同じ鑑定書ランクの真珠は同じ価格で販売しています。

同じランクでも仕入れの状況によって原価には幅がありますが、お客様から見れば同じランクです。「同じランクなのに、なぜこちらは高いのか」と迷わせない。そのための、当店の決め事です。

偽造・すり替えの心配は、どれくらい必要か

インターネットには、「鑑別書があっても安心できない」と煽るような記事も見られます。

書類そのものへの不安は、2種類に分けて考えると整理できます。

書類の偽造——ゼロではないが、専門店には割に合わない

1つ目は、鑑別書という「紙」自体が、鑑定機関の名前を騙って偽造されているのではないか、という不安です。

これはたしかにゼロではありません。

しかし、書類を偽造して発覚すれば、その業者は詐欺として商売を続けられなくなります。実店舗を構え、何十年と同じ名前で営業してきた専門店にとって、不正の発覚は事業そのものの終わりを意味する、割に合わないリスクです。

実物とのすり替え——現実的な注意はフリマ・オークション

2つ目は、鑑別書自体は本物でも、書類に記載された真珠と、実際に届いた真珠が別のもの(=品質の劣る真珠)にすり替えられているのではないか、という不安です。

これも偽造と同じで、屋号を上げて長く営業を続けている専門店にとっては、顧客との信頼関係そのものが商売の土台であり、割に合わない不正です。

注意が必要なのは、むしろフリマアプリやネットオークションでの個人間取引(中古品・転売品)のほうです。

書類と実物の対応を第三者が保証しにくく、すり替え品や偽物が混ざる余地が構造的に残っています。

つまり、偽造・すり替えのリスクは「どこで、誰から買うか」を選ぶことで、大部分を取り除けます。

鑑別書と鑑定書、そもそも何が違うのか

最後に、混同されやすい2つの書類の違いを整理しておきます。

鑑別書は「本物かどうか」を判定する書類です。模造真珠ではなく本物の真珠であるか、天然か養殖か、人工的に着色されていないかを、蛍光検査・拡大観察・分光測定などの機器を使った科学的な検査で判定します(真珠事典〈監修:小松博/真珠科学研究所、2015年〉第VII章)。

鑑定書(グレーディング)は「品質」を評価する書類です。本物であることを前提に、その真珠がどれくらい美しいかを評価します。「花珠」「オーロラ花珠」「天女」といったランク名は、すべてこの品質評価の結果です。

本来は別の概念ですが、実際の発行現場では、真贋の判定結果と品質ランクが1枚の書類に一緒に記載されることが多く、「鑑別鑑定書」と呼ばれる場合もあります。

呼び方が現場によって揺れているため、「結局どっちの話をしているのか分からない」という混乱が起きやすいのです。

品質ランクの詳しい読み解き方は、こちらで解説していますので、あわせてご覧ください。

購入前にチェックしたい3つのポイント

不安を感じたときに確認できる、実務的なチェックポイントを3つ挙げます。

1つ目は、鑑別書・鑑定書が「真珠総合研究所」か「真珠科学研究所」のどちらかの発行であるか。ランク名(花珠・準花珠・オーロラ花珠)まで一字ずつ確認してください。

2つ目は、店舗の所在地・屋号・営業年数が明確で、実店舗や顔の見える発信(YouTube等)があるか。

3つ目は、鑑別書・鑑定書が実物と一緒に届き、記載内容(色・サイズ・ランク・調色の有無)と手元の真珠が一致しているか。

なお、ご自宅で本物・偽物を簡易的に見分ける方法は、こちらで紹介しています。

よくある質問

同じ「花珠」なのに、お店によって値段が全然違うのはなぜですか?

発行機関の違い、ランク名の紛らわしさ(花珠・準花珠・オーロラ花珠)、調色・無調色の違い、同じ合格でも品質に幅があること、金具・ケース・アフターサービスの差が重なっているためです。詳しくは本文の「同じ『花珠』なのに値段が違う5つの理由」をご覧ください。

「花珠」の鑑別書なら安心と考えてよいですか?

「花珠」という名称自体には法的な定義がなく、発行機関を問わず名乗れてしまいます。安心できるのは、真珠総合研究所か真珠科学研究所(オーロラ花珠)が発行したものに限られます。

鑑別書がついていれば絶対に安心ですか?

「絶対」とは言えませんが、真珠総合研究所か真珠科学研究所発行の鑑別書・鑑定書であれば、信頼性は高いと考えてよいです。あわせて、屋号を明らかにして長く営業している専門店から買うことで、リスクはさらに下がります。

ミキモトやタサキには花珠の鑑定書が付いていないと聞きました。鑑定書は不要なのでは?

世界的なブランドは、ブランドの名前そのものが品質保証として機能しています。それ以外のお店では、自社の基準を第三者が客観的に確認する仕組みとして、鑑定書が必要だと当店は考えています。

鑑定書の費用が価格に上乗せされているだけではありませんか?

鑑定料は1本あたり5,000円前後で、フォーマルな真珠ネックレスの価格のごく一部です。当店ではむしろ、自社選別と第三者審査という二重の手間をかけることで、価格の根拠を明確にするために取得しています。

鑑別書と鑑定書は同じ書類ですか?

本来は別の概念です。鑑別書は「本物かどうか」の真贋判定、鑑定書は「品質がどれくらいか」の評価(グレーディング)です。ただし実務上は1枚の書類にまとめて発行されることも多く、「鑑別鑑定書」と呼ばれる場合もあります。

まとめ

同じ「花珠」でも中身には幅があり、値段の差には理由があります。

発行機関・ランク名・調色の有無・合格の余裕・仕立てとアフターサービスまで見れば、価格の意味は必ず読み解けます。

そして、信頼して参考にできる鑑定機関は、真珠総合研究所と真珠科学研究所の2つに限られます。

不安を煽る情報に振り回されるより、「どこで、誰から買うか」と「第三者の鑑定書」の両方を確かめること。それが、いちばん確実な備えです。

参考文献


「この値段の差は何だろう」「この鑑別書は本当に大丈夫だろうか」と迷うことがあれば、遠慮なくお問い合わせください。1965年創業から60年以上、真珠と向き合ってきた専門家として、一つひとつのご不安にお答えします。