真珠ができるまで
真珠のスタンダードといえるアコヤ真珠の養殖は、日本で始められ、今でも、日本が圧倒的なトップ生産を誇っています。
そんな真珠養殖について、真珠貝が生まれ育ち、真珠が出来上がり、製品となるまで、その歩みを解説していこうと思います。
3つの業者によって真珠が出来上がる
大きく分けて、以下の三つの工程を経て、ジュエリー製品となります。
- 母貝業者の仕事/真珠を育てる母貝を育成する(2年)
- 真珠養殖業者の仕事/真珠を養殖する(1年〜2年)
- メーカーの仕事/製品へ加工する(半年〜1年)
稚貝を生み出す
アコヤ貝の赤ん坊である稚貝。
稚貝は、古くは自然の海から採取されていましたが、現在は、漁協などが運営する種苗センターなどで生まれます。
2mmほどに育った稚貝は、生産組合などを通して母貝業者へ配布されます。
母貝を育成する
種苗センターなどから仕入れた2mmほどの赤ちゃんの貝(稚貝)を、約2年かけて、7cmほどの大人の貝(母貝)に育て上げます。
丁寧に、掃除や手入れをすることで、真珠養殖に適した、大きく健康な貝に育てることができます。
母貝は専門の業者で行われます。愛媛県宇和島市は、母貝養殖でも日本トップの生産量を誇っています。
大人になったアコヤ貝は、11月ごろに養殖業者に引き渡されます。この母貝をもとに、1年から2年ほどかけて、真珠を育てていきます。
核入れ(3月〜7月頃 )
adobestockによる画像
4ヶ月ほどの準備期間をおいて、春ごろに「核入れ」を行います。
真珠は、「核」のまわりに「真珠層」が何重にも巻くことで出来上がります。
まず、別のアコヤ貝から、外套膜と呼ばれる内臓の一部分を切り出します。
この外套膜が、「真珠層」のもととなります。
母貝の体内に、「核」と「外套膜(真珠層のもと)」を一緒に挿入します。
「核入れ」は人間に例えれば開腹手術のようなもので、熟練の技術と、細かな気遣いが求められます。
核入れを終えた真珠は、1ヶ月ほど静かな海で養生されます。
本養殖(8月〜12月頃)
adobestockによる画像
養生の後、真珠貝を専用のネットに入れて、潮の流れの早い沖合に移し、本養殖が行われます。
そのままにしておくと、カキやフジツボ、海藻類が付着して、真珠貝の成長を妨げてしまいます。 そのため月に2-4回ほど、貝を掃除をして綺麗な状態に保ちます。
貝の状態を見て養殖する場所を移動したり、絶えず気を配る必要があります。
浜揚げ(12月〜1月頃)
真珠貝から真珠を取り出す作業を「浜揚げ」といいます。
冬の寒い時期は、「化粧巻き」と呼ばれる、最も美しい真珠層が生まれます。
その化粧巻きを真珠層の最表面に出すように、12月から1月頃に浜揚げが行われます。
もう一年、海に置いて養殖するものを「越物(こしもの)」と呼びます。
製品へ加工する
浜揚げされた真珠は「入札会」というオークション形式の業者取引を経て、
真珠加工販売業者に手渡されます。
- 穴あけ → 下処理 → 着色 → 連組 → 製品化
まず最初に、
指輪、ペンダント、ピアス、イヤリング、ブローチなどに使われる「片穴」と、
ネックレスに使われる「両穴」とに分けられます。
「片穴」は片面に一つだけ穴を開けた真珠、「両穴」は穴を貫通させた真珠です。
穴を開けられた真珠は、外部内部の不純物を取り除く下処理を施されます。
その後、多くの真珠は、染料を染み込ませる「調色」といわれる作業を行っていきます。
作業が終わると、片穴の真珠は製品化されますが、
両穴の真珠は、更に「連組み」と呼ばれる作業をおこないます。
これは、大きさ、色、形、光沢を合わせながら糸を通し、ネックレスに組み上げていく地道な作業です。
熟練の職人が丁寧に選別し、一本のネックレスに組み上げていきます。
熟練の技と、美的センスが問われる作業です。
消費者へ
加工業者のによって作られた製品は、製品に加工した状態で、もしくは、連(金具をつけていないネックレス)や、ルース(裸珠)のままで、販売店に運ばれます。
デパートや小売店などに展示され、消費者の皆様の目に届く状態になるのです。
まとめ
デパートなどで見られる美しいアコヤ真珠は、自然の海で育ち、生産者が丹精込めて作ったものです。
真珠が作られる背景を知れば、真珠の輝きも、より美しく見えるのではないでしょうか。
以上、アコヤ真珠ができるまでについて解説してみました。ご参考になれば、幸いです。
参考文献
『えひめ発 真珠ものがたり』 中国四国農政局愛媛統計情報事務所 編 愛媛農林統計協会
アメリカ宝石学会公認鑑定士(GIA.G.G.)
Gemological Institute of America Graduate Gemologist
ダイヤモンド卸、宝飾メーカー勤務を経て、創業60年の老舗、井上真珠店に勤務。現在は暖簾分けされた宇和島イノウエパールの代表。
パール専門小売店にて「お客様一人一人と向き合う接客」をモットーに、お客様の希望や体型をヒアリングの上、仕入れから最終仕上げまでを行い、累計1,000本以上のネックレスを販売してきました。