ピンクパールか?無調色か?真珠の色の違いと選び方
みなさん、真珠といえば、どんな色を思いうかべるでしょうか?
- 華やかなピンクパール
- 純白のホワイトパール
この二つを思いうかべるかたが多いかと思います。
でも、私たち真珠屋さんは「ピンク色の真珠をください!」と言われると、心のなかでこうツブヤキます。
「ピンクにもいろいろあるんだよなあ。。。」と。
ここでは、日本で生産されるアコヤ真珠の色について、
また調色(染色)と無調色(ナチュラルカラー)について解説します。
- 真珠の色は「実体色」と「干渉色」の組み合わせ
- 違いが大きく作用するのは実体色
- 実体色の種類
- 言ってはいけないピンク色の秘密
- 調色(染色)とは
- 無調色(ナチュラルカラー)とは
- 調色と無調色の違い
- 調色と無調色の見分け方
- まとめ | 調色は悪いことなのか
真珠の色「実体色」と「干渉色」の組み合わせ
真珠の色は、2つの色のコンビネーションでできています。
- 実体色(真珠の地色)
- 干渉色(光の反射によって現れる色)
この二つは、それぞれに影響しあい、繊細で微妙な色合いを生み出しています。
その色は複雑で、「ピンク」や「ホワイト」の一言では表現できないのです。
実体色について
実体色は、以下の3つの種類に分けられます。
- 真珠本来の色 (黄色〜ホワイト)
- 異物による色 (ブルー〜グレー)
- 着色による色 (ピンク)
詳しくは後ほど解説します。
干渉色について
実体色の上に、干渉色と呼ばれる、光の反射によって作られる色がプラスされます。
干渉色は、以下の3つの種類です。
- ピンク系
- ピンクグリーン系
- グリーン系
干渉色とは、一言でいうと「光の反射によって現れる色」のことです。
詳しくはこちらの記事をご参照ください
違いが大きく作用するのは実体色
真珠の色の要素である、実体色と干渉色。
パッと見て大きく違いが分かるのは、実体色の方です。
80%くらいの印象は実体色で決まり、残りの20%が干渉色という感じでしょうか。
真珠の繊細な輝きは干渉色の働きによりますが、
実体色の方は存在感がとても大きいです。印象に残るのは実体色です。
実体色の種類
上でも述べたように、実体色は3種類に分けられます。その分類は、色が現れる原因によります。
真珠本来の色
真珠層のもともとの色(実体色)は、うすい黄色です。
店頭に並ばない真珠を含めると、真珠の大部分は黄色系の色をしています。
黄色の色素がごく薄く、白い真珠を選び抜いて作ったのが、みなさんが思いうかべる「ホワイト」や「ピンク」の真珠なのです。
黄色の濃いものは「ゴールド」と呼ばれ、薄いものは「クリーム」と呼ばれます。
異物による色
ブルーやグレーと呼ばれる真珠です。
真珠層に異物が混入することで、黒っぽい色あいが現れます。
真珠層本来の色ではないので、評価のわかれる真珠です。フォーマルとしてはあまり使われません。お葬式などの専用として使われることがあります。
人工的な着色作業により、グレー系の色をつけている場合もあるので、注意が必要です。
調色(着色)による色
特殊な染料を、核と真珠層の間に染み込ませることによって、真珠の実体色をピンク系にすることができます。
真珠に一般的に行われる加工です。
本来、真珠の実体色にはピンクの色合いはありません。自然な真珠のピンクは、干渉色によるものです。
調色(着色)した真珠のピンク色は、自然なピンク色とは違うものなのです。
専門家でないと分からない程度ではありますが、発生のメカニズムが違うので、見た目が違います。
ここからは、真珠の王道である、ピンク、ホワイトの真珠について、詳しく解説して行こうと思います。
言ってはいけないピンク色の秘密
真珠に染色が施されていると言うと、皆さんビックリされると思います。
実はこのこと、30年ほど前までは、一般の皆さんに情報の開示がされていませんでした。
なので、30年以上前に真珠を買われた方は、染色が施されているということを知らない方がほとんどだと思います。
バブル前後の頃は、ピンク色が強ければ強いほど人気があり、ホワイト系の真珠は見向きもされない時期でした。
その結果、現在から見れば行き過ぎた染色が行われるようになり、結果、真珠に対する不信感を生むことになりました。
今でも、バブル前後に真珠を買ったことがある方たちは、「ピンク色が良い真珠!」と強く思い込む傾向があるようです。
しかし、現在では、あまりに強いピンク色の真珠は、過度の染色を行なった恐れがあるので、敬遠される傾向があるようです。
調色(染色)とは
「調色」と呼ばれる染色処理は、かなり昔から行われてきた、伝統的な加工処理技術です。
その目的は、輝きをよりよく見せることと、ネックレスにする際の色の統一性を高めるためです。
本来は、干渉色を補完するするために、「ほんの少し」行われるはずであった調色ですが、
一時期、地色が不自然に強い赤色に変化するほどの強い調色が行われるようになり、問題になりました。
現代では、その反動もあり、調色をおこなっていない、無調色の真珠が人気を集めるようになっています。
無調色(ナチュラルカラー)とは
調色(染色)を行なっていない真珠を、無調色(ナチュラルカラー)と呼びます。
この「無調色」という言葉は「調色」の対義語であり、海から出た状態の無加工の真珠(生珠)を表すものではありません。
シミ抜きなど最低限の加工は施してありますので、鑑定書には「エンハンスメント」の記述があります。
調色と無調色の違い
調色した真珠と、調色をしていないナチュラルの真珠、違いはどのくらいあるのでしょうか?
実は結構違います。画像をご覧下さい。
左画像の調色したピンクの方は、真珠の輪郭線のあたりがピンク色になっているのがお分かりでしょうか。
この真珠の地色はホワイトのはずですが、地色には存在しないピンクの色が全体に浮き出ているのが分かります。
一方、右画像の無調色(ナチュラル)の方は、地色が無色のホワイトです。
ピンクやグレーの色合いが出ていますが、この色合いは「干渉色」といわれる自然な色合いです。
- 調色したピンクの真珠は、地色全体がピンク色をしている
- 無調色のピンクの真珠は、光の反射像の周りにピンク色が出ている
このような違いがあります。
調色と無調色では、同じピンク色であっても色の出方に違いがある、という事にご注意頂ければと思います。
また当然ながら、調色と比べて、無調色の方が希少で高価です。
調色と無調色の見分け方
では調色と無調色は、どうやって見分ければいいのでしょうか?
大雑把に見分ける方法と、正確に見分ける方法の2つを解説します。
調色と無調色を大雑把に見分ける方法
大体の見当をつけるときには、ピンクの強さで判断するのが良いと思います。
無調色のナチュラルピンクの真珠は、薄いピンクですので、一見ホワイトに見えると思います。
一方、調色のピンクは、かなりピンクが強く見えます。
ぱっと見てピンクがはっきり分かるようだと、調色の可能性が強いです。
ナチュラルのパールはピンク系であっても、一見はホワイトに見えます。
調色と無調色を正確に見分ける方法
正確に見分けるには、鑑定書を見るしかありません。
鑑定書で見分けるには、備考欄に注目します。
調色(着色)を行なっていない真珠は、「無調色」または「ナチュラル」と明記されます。
表記のない真珠は、調色(着色)を行なっています。
ややこしいのですが、以下のようになっています。
- 表記なし → 調色/着色
- 無調色と表記 → 無調色/ナチュラル
真珠は調色がしてあるのが普通なので、調色の場合は特に表記がありません。
分かりづらいですが、注意して鑑定書を見て頂ければと思います。
まとめ | 調色は悪いことなのか
- 真珠の色には「実体色」と「干渉色」がある
- 違いが大きいのは「実体色」
- ホワイト〜ピンク系の真珠の「実体色」は白色だが、大部分は染色(調色)してある
- ぱっと見てピンクが強い真珠は「染色(調色)」の可能性が強い
- 調色と無調色を正確に見分けるには、鑑定書の備考欄をみる
以上のようなことを解説してみました。
ここまで読まれると、調色は悪いことと思われる方がいるかもしれません。
改めてお断りしますと、調色は伝統的な加工技術であり、決して悪いことではありません。
適切に行うと、真珠の美しさを向上させてくれます。
国内の有名パールブランドさんも、ほんの少しの調色を行なっているようです。
ですが、安価なパールの中には、過度に調色を行なって、良い真珠とはいえないものもあります。
特に「ピンク色の真珠が良いもの」と強く思い込まれている方は、
強すぎる調色を行い、本来の輝きを損ねている真珠を選んでしまう恐れもありますので、ご注意くださいね。
以上、調色と無調色を中心に、真珠の色について解説してみました。
参考にして頂けましたら幸いです。
アメリカ宝石学会公認鑑定士(GIA.G.G.)
Gemological Institute of America Graduate Gemologist
ダイヤモンド卸、宝飾メーカー勤務を経て、創業60年の老舗、井上真珠店に勤務。現在は暖簾分けされた宇和島イノウエパールの代表。
パール専門小売店にて「お客様一人一人と向き合う接客」をモットーに、お客様の希望や体型をヒアリングの上、仕入れから最終仕上げまでを行い、累計1,000本以上のネックレスを販売してきました。