アコヤ真珠とは?本真珠との違い・産地・特徴を解説
「本真珠」という言葉には、二つの意味があります。①模造ではない「本物の真珠」の総称、②アコヤ真珠の別名、の二つです。
宝飾業界の店頭で「本真珠」といえば、伝統的にアコヤ真珠を指します。この意味では、アコヤ真珠と本真珠は同じものです。
一方、ネット記事や買取店では「本物の真珠全般」の意味で使われることも多く、この場合は淡水真珠や南洋真珠も本真珠に含まれます。どちらの意味かを見分けるコツも含めて、整理して解説します。
- アコヤ真珠とは
- アコヤ真珠と本真珠の違い
- アコヤ貝とは
- アコヤ真珠の歴史
- アコヤ真珠の特徴
- アコヤ真珠の産地
- アコヤ真珠に天然物は存在するか?
- 他の種類の真珠との違い
- アコヤ真珠と花珠真珠の違い
- アコヤ真珠をつかったジュエリー
アコヤ真珠とは

アコヤ貝から生まれる真珠を「アコヤ真珠」と呼びます。
しっとりとした、奥深く複雑な輝きと、丸いかたちが魅力です。
日本では、古くから天然の真珠が獲れていたことが、古代の文書からうかがえます。
明治期の日本が、真珠の養殖技法を発明して生産を開始しました。
その後、世界の市場を席巻し、今では世界中のジュエリー愛好家に愛されています。
アコヤ真珠は、日本人の技術と、日本の豊かな自然によって育まれた、私たちが誇るべきジュエリーなのです。
今でも、アコヤ真珠は、日本の養殖業者の手で大切に養殖されて育てられています。
アコヤ真珠と本真珠の違い
「本真珠」は、二通りの意味で使われている言葉です。
アコヤ真珠との関係も、どちらの意味で使われているかで変わります。
| 用法 | 意味 | 主に使われる場面 |
|---|---|---|
| 広い意味 | 模造真珠(イミテーション)ではない、本物の真珠の総称。アコヤ・淡水・南洋すべてを含む | 買取店の案内・ネット記事など、一般消費者向けの文脈 |
| 狭い意味 | アコヤ真珠の別名 | 宝飾店の店頭・真珠業界の伝統的な言い回し |
正式な名称は「アコヤ真珠」です。「本真珠」は正式名称ではなく、通称です。
店頭では、どちらの意味でも使われています
1965年創業の当店の店頭でも、「これは本真珠ですか?」というご質問をよくいただきます。
その意図は二通りに分かれます。「本物の真珠かどうか」を確かめたい方と、「アコヤ真珠かどうか」を確かめたい方です。
一方、私たち真珠業界の人間が「本真珠」と言うときは、アコヤ真珠を指します。
どちらの使い方も、実際にあります。だからこそ、言葉だけに頼らず、どちらの意味で使われているかを見分けることが大切です。次のコツで確認すれば迷いません。
どちらの意味か見分けるコツ
- 「本真珠・淡水真珠・南洋真珠」のように、真珠の種類と並べて書かれていれば「アコヤ真珠」の意味です。
- 「本真珠か、模造真珠(イミテーション)か」のように、本物かどうかの文脈なら「本物の真珠全般」の意味です。
- ネット通販の「本真珠ネックレス」という商品名は、アコヤ真珠とは限りません。淡水真珠も広い意味では「本真珠」だからです。母貝の種類(アコヤ・淡水など)が明記されているかをご確認ください。
貝パールと本真珠の違い
貝パールは、貝殻から作った核の表面に塗装を施した「模造真珠」です。
貝を海で育てて、真珠層を巻かせてつくる真珠とは、作られ方がまったく違います。
広い意味の「本真珠」は、こうした模造品と区別するための言葉です。
本物の真珠と模造真珠の具体的な見分け方は、下記の記事で解説しています。
アコヤ貝とは

真珠を生み出すもととなる「アコヤ貝」について、宝石宝飾大辞典の項目が簡潔で分かりやすいので、一部抜粋させてもらいます。
あこやがい(阿古屋貝)
ウグイスガイ科に属する海水産の二枚貝で、真珠養殖上最も重要な種類であり、
日本で真珠母貝といえばこの貝を指すことが多い。大きさは、長さ、高さとも7〜8cm、幅は3cm程度の中形の二枚貝である。
寿命は最長15年位といわれている。貝の内側は美しい真珠層で覆われ、外側は黒ないし暗褐色の外皮で構成されている。
日本では太平洋側は房総半島、日本海側は能登半島を北限とし、南は沖縄まで広く分布するが、
比較的暖かい海域で水温20°〜26°、波の静かな湾内の水深5〜10m位の浅海が生息に適している。近山晶『宝石宝飾大辞典』近山晶宝石研究所,1996
より引用(改行段落は当記事執筆者による)
アコヤ真珠の歴史
はるかな昔から、アコヤ貝は天然の真珠を生みだし、その美しさは人々を魅了してきました。
しかし、天然の真珠が生まれることはごくごく稀であり、その中でも、真円の形が生み出されることは、さらに稀でした。
現在、私たちが思い浮かべる、まん丸の真珠は、明治期の日本で発明されました。
西川籐吉、見瀬辰平、御木本幸吉。先人たちの発明と努力により、
1916年ごろには、日本で真円真珠の養殖が本格的に始まるようになりました。
ミキモト真珠島の御木本幸吉像
1919年、ミキモトがパリ支店を開設。
それを皮切りに、ヨーロッパ、アメリカ、その他世界の宝石市場を日本のアコヤ真珠が席巻していきます。
その理由は、日本で養殖されたアコヤ真珠が、天然真珠に比べ、
輝きかたち等の品質において優れていて美しく、安価であったことです。
それまで欧米で主流だった天然真珠は、日本のアコヤ真珠によって販売量が激減しました。
日本産のアコヤ真珠の美しい形、美しい輝き、そしてお手軽な価格に、世界中の愛好家が熱狂したためです。
そして天然真珠の市場は、ほぼ壊滅し、パールといえば日本のアコヤ真珠をさすようになりました。
日常で、映画で、ショーで、真珠を身に付けたファッションアイコンたち。
ココ・シャネル、グレース・ケリー、オードリー・ヘップバーン、ダイアナ妃。
彼女たちが、身に付けたのも、みな日本産のアコヤ真珠だといわれています。
日本が誇るべき特産品であるアコヤ真珠は、もちろん、皇室の方々にも代々愛用されています。
アコヤ真珠の特徴

- てり(真珠ならではの輝き)が美しい
- 中くらいの7-8mmサイズがメイン
- まん丸な形が多い
- 最も正統なスタンダードパール
アコヤ真珠の特徴は、透明感のある輝きです。 色彩のある輝きと、透明感を併せ持った、いわゆる「てり」の最も美しい真珠が、アコヤ真珠です。
8mm前後のサイズがメインです。他の真珠と比べると、中位のサイズであり、上品に身に付けられるサイズ感です。
真円真珠が出来やすく、すっきりとしたまん丸の形が楽しめます。
現代のファッションを形作った1920年代から1980年代まで、世界中で愛された真珠は、日本産のアコヤ真珠でした。
現在では、淡水真珠や南洋真珠などの生産量も増えましたが、
最も正統で、最もスタンダードなイメージのパールは、日本産のアコヤ真珠です。
アコヤ真珠の産地

アコヤ真珠は、日本の海で作られます。
中国など海外での生産も始まってはいますが、低品質のものがごく少量だけできているようですが、
市場に出回っている高品質のアコヤ真珠は、日本産だと思って間違いないと思います。
養殖真珠発祥の地は三重県ですが、
1970年代頃より愛媛県がトップの生産地となりました。
その後、愛媛県と長崎県がトップを競い合っています。
2024年の統計では長崎県が1位、愛媛県が2位、三重県が3位。この3県で全国の生産量の約9割を占めます。
2024年(令和6年)の真珠生産データ
全国総計 生産量 12,421 kg 産出額 33,503 百万円
生産量の県別順位
1位 長崎県(約5,800 kg) 2位 愛媛県(4,095 kg・シェア33%) 3位 三重県(約1,800 kg)農林水産省「海面漁業生産統計調査」「漁業産出額」より
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/
2019年に始まったアコヤ貝の大量死の影響で、全国の生産量は2018年(20,581 kg)から約4割減っています。
一方で産出額は、2018年の約170億円から2024年は約335億円へ、ほぼ倍増しました。生産量が減り、真珠の取引価格が大きく上がったためです。
価格上昇の背景は、下記の記事で詳しく解説しています。
アコヤ真珠に天然物は存在するか?
アコヤ真珠の天然物は無い、と言っても良いかと思います。
海のどこかには存在するのかもしれませんが、
養殖真珠と天然真珠の原理は変わらないうえ、養殖真珠の方がまん丸で綺麗であるため、
手間をかけて探す必要がないのです。
ケシ真珠とは
なお、養殖された真珠貝の中に、「ケシ(芥子)真珠」と呼ばれる無核の真珠が入っていることがあります。
ケシ真珠は、核から外れたピース(外套膜)が元となってつくられるものと、天然物と同じ原理でつくられるものとがあり、どちらであるかは判別不可能です。
ケシ真珠を「天然真珠」だと言う人もいますが、
養殖の過程で生まれた真珠ですので、「天然真珠」と呼ぶことは無理があると思います。
やはり、ケシ真珠は「養殖真珠」の範疇に入れることが正しいのではないでしょうか。
他の種類の真珠との違い
アコヤ真珠の特徴は、丸い形と、中程度の大きさ、卓越した輝きです。
様々な真珠のなかでも、丸い形、美しい輝きは優越していますが、 大きさでは、南洋白蝶真珠やタヒチ黒蝶真珠より劣ります。
多品種と比べると、アコヤ真珠は、上品な大きさで良質な品質を持つ真珠と言えるかとおもいます。
アコヤ真珠と淡水真珠、アコヤ真珠と南洋真珠など、多品種との違いなどは、
下記の記事にまとめてあります。ご参考下さい。
アコヤ真珠と花珠真珠の違い
アコヤ真珠の中で、品質を表す言葉として「花珠」や「天女」があります。
有名な「花珠」はアコヤ真珠の品質を表す言葉で、花珠と言う種類の真珠がある訳ではありません。
同じく「天女」もアコヤ真珠の品質を表す言葉で、花珠の上のランクを指します。
下記の記事をご参考下さい。
アコヤ真珠を使ったジュエリー
アコヤ真珠のチョーカーネックレス
アコヤ真珠を使ったジュエリーで最も有名なものは、50個ほどの真珠を連ねたチョーカーネックレスです。 胸元に沿うプレーンなタイプは、世界のジュエリーのスタンダードとなっています。
日本では冠婚葬祭に万能に使えますので、一つは持っておきたい定番のジュエリーです。
アコヤ真珠のロングネックレス
ココ・シャネルに愛されたことで有名なアコヤ真珠のロングネックレスは、華やかに身につけられる一品です。
60cmから120cmまで、様々な長さを、様々なスタイルで身につけられます。 80cm以上ですと、2連に巻きつけて身につけることも可能です。
真珠と真珠のあいだに、パーツをいれてアクセントをつけたステーションネックレスも人気です。
日本のお葬式での着用はNGですので、お気をつけください。
アコヤ真珠のリング(指輪)
指輪用の真珠は、通常、アコヤ真珠のなかでも最も美しい珠を選りすぐって作られます。 アコヤ真珠の卓越した輝きを楽しめるジュエリーですが、最大でも9〜10ミリくらいの大きさとなります。
大きさだけ比べると、南洋白蝶真珠よりも小さなジュエリーとなります。
アコヤ真珠のペンダント
良質なペンダントも、リングと同じく、最も美しい珠を選りすぐって作られます。 やはり南洋白蝶真珠と比べると小粒ですが、上品な輝きを楽しめます。
アコヤ真珠のピアス
耳元にぴったりとくっつくスタッドタイプのピアスは、様々なシーンで使える定番ジュエリーです。
6mm以下の小さめのパールピアスは、キッチリとしたお仕事のシーンにも着用できます。 8mm以上のピアスは、日常でもフォーマルでも使える万能タイプです。
10mm以上のきれいなアコヤ真珠ピアスは、ほぼ市場に出回りません。
華やかな大粒を望まれる場合は、南洋白蝶真珠を選ばれると良いかと思います。
まとめ
アコヤ貝を養殖して作り出されるのがアコヤ真珠です。
アコヤ真珠の養殖は日本で発明され、いまでもほとんどが日本でつくられています。
「本真珠」は、本物の真珠の総称として使われることもあれば、アコヤ真珠の別名として使われることもある言葉です。
真珠業界の店頭で「本真珠」といえば、アコヤ真珠を指します。
商品名や口頭の説明だけで判断せず、母貝の種類(アコヤ・淡水・南洋など)が明記されているかをご確認ください。それが誤解なく真珠を選ぶいちばんの近道です。
真珠養殖は日本のアコヤ真珠から始まりました。真珠のスタンダードスタイルは、アコヤ真珠が元になっています。
以上、アコヤ真珠の特徴や歴史、作り方などについて解説してみました。
ご参考になれば、幸いです。
参考文献
近山晶『宝石宝飾大辞典』 近山晶宝石研究所,1996
『えひめ発 真珠ものがたり』 中国四国農政局愛媛統計情報事務所 編 愛媛農林統計協会
『真珠の世界史』 山田篤美 著 中公新書,2013
米国宝石学会(GIA)公認鑑定士・Graduate Gemologist(G.G.)
真珠科学研究所認定 テリマスター/真珠C・E(クリーニング&エステ)マスター
株式会社Inoue Pearl(イノウエパール)代表。
ダイヤモンド卸・宝飾メーカー勤務を経て、1965年創業の真珠専門店「有限会社井上真珠店」に参画。2016年、井上真珠店松山店からのれん分けして独立した。
生まれも育ちも愛媛県宇和島市。宇和島で真珠養殖を始めた祖父の代から続く、真珠ひと筋の家に育った。
厚巻き・強てりを品質の原則とし、自社基準を満たさない真珠は取り扱わない。ほぼ全商品に真珠科学研究所または真珠総合研究所の鑑定書を付与。無調色真珠をメインに扱う。累計1,000本以上のアコヤ真珠ネックレスを自社にて選別・販売してきた。
実店舗は愛媛県松山市。公式オンラインショップ(https://shop.i-pearl.co.jp/)でも販売中。





