パールネックレスの修理、糸替えについて
真珠のネックレスは、糸を定期的に交換する必要があります。
長年組み替えずに放っておいたネックレスは、最悪の場合、切れて散らばってしまうことも!
ここでは、真珠ネックレスの組み替えのタイミング、どこで頼むか、組み替える糸の種類などについて説明していきます。
- 糸替えが必要なネックレス、糸替えの必要がないネックレス
- 糸の種類
- オールノットとは
- どれくらいの頻度で組み替えるたら良いか?
- 糸を交換すべきかどうかを見分ける方法
- 自分でネックレスを組み替える方法
- どこで糸替えをしてもらえる?
- 糸替え料金の相場
- 糸替えのときにするべき3つのこと
- アフターメンテナンスできる店で購入しよう
糸替えが必要なネックレス、糸替えの必要がないネックレス
真珠ネックレスは、大きく分けて、2つの種類があります。
- 糸で組んであるネックレス
- ワイヤーで組んであるネックレス
このうち、糸替えが必要なものは、「糸で組んであるネックレス」の方です。 「ワイヤーで組んであるネックレスワイヤー」は劣化しないので、組替えの必要はありません。
なぜ糸で組むのが一般的なのか?
ワイヤーで組めば、糸替えの必要がない。だったら、どうして全部ワイヤーで組まないの? そう思われるかたも多いかと思います。
その理由は、以下の2つに集約されると思います。
- 糸で組んだほうが見た目が良い
- ワイヤーはごくまれに切れる
糸で組んだネックレスは、糸の伸縮性を活かした独特のしなりがあり、美しいフォルムがでます。
一方、ワイヤーは伸縮性がありません。 真珠同士の擦れを防ぐために、少し隙間を開けて組むか、クッションを入れて組む必要があります。 糸に比べて見た目が悪くなります。
また、現在の糸は非常に丈夫な素材ですので、定期的に交換すれば切れることはまずありません。 一方、ワイヤーは、折り曲げた状態で圧力をかけると、ごくまれにポキっと折れることがあります。
強度の信頼性からいえば、糸で組んだほうが安全だと言えます。
糸で組んだパールネックレスの特徴
糸で組んだネックレスの利点
- 張りのある美しいフォルムがある(見た目が美しい)
- 糸が見えづらい
- 定期的に糸替えをすれば、安全に使える
糸で組んだネックレスの欠点
- 定期的に糸替えをする必要がある
- 技術者がいる店でしか糸替えができない
ワイヤーで組んだパールネックレスの特徴
ワイヤーで組んだネックレスの利点
- 糸替えの必要がない
- だれでも組むことができる
ワイヤーで組んだネックレスの欠点
- 見た目が悪い
- ごくまれに切れることがある
糸の種類
真珠のネックレスを組む糸には、いくつかの種類があります。
現在よく使われているのは、以下の三種類です。
- GPT(高密度ポリエチレン素材)
- テトロン糸(ポリエステル)
- 絹糸
美しく丈夫なGPT
ここ10年ほどで一般的になった、化学繊維で作られた糸です。
以前使われていたテトロン糸よりも、美しく、強度の強い種類の糸です。
テトロン糸の三倍の強度を持ち、防水性に優れ、絹のような美しい輝きを持ちます。
欠点は、テトロン糸の5倍ほどのコストがかかり、高価なことです。
昔からある安いテトロン糸
10年ほど前までよく使われていた糸です。現在では安いこと以外の利点はありません。
とはいえ、まだテトロン糸を使う業者も多いです。
気をつけて、GPTを使う業者を選ぶようにして下さい。
ミキモトでネックレスの組替えに使われる絹糸
美しい見た目と、優れた伸縮性を持ちますが、耐久性に劣ります。
有名なミキモトで使われているようですが、かなり特殊な例だと思います。
総合的に優れたGPTをおすすめします。
オールノットとは
オールノットとは、すべての珠と珠の間に結び目を作る組み方で、
ニューヨークノットスタイルとも呼ばれます。
海外のジュエリーでよく使われる通し方です。
オールノットの最大の利点は、切れても散らばらないことです。
対して、一般的に行われる真珠ネックレスの糸通し方法は、
端の5珠程度を二重に糸を通し、端に結び目を3つほど作る方法です。
仮にこの通し方を日本スタイルと呼びます。
切れやすい端の部分を二重にする日本スタイルに対して、
オールノットはすべてを一重で組むので、若干切れやすくなります。
- 切れやすいけれど、切れても散らばらないオールノット
- 切れにくいけれど、切れたら散らばる日本スタイル
優劣は付けづらいですが、定期的なメンテナンスができるのであれば、日本スタイルの方がすぐれていると思います。
日本のアコヤ真珠ネックレスは、一般的に日本スタイルの糸通しで組み上げられます。
なお、オールノットは、結び目の分、少し長くなります。
どれくらいの頻度で組み替えるたら良いか?
最新の糸であるGTPで組んだネックレスの場合、
5年に一度は糸替えをするようにして下さい。
しかし実は、5年だと、まだ劣化していないことが多いです。
ただ、糸の劣化は、環境によって早まることがあるので、少し早めに5年に一度の交換をおすすめします。
最低でも、10年に一度は交換をして下さい。
糸を交換すべきかどうかを見分ける方法
期間に関わらず、糸の交換時期かどうかを見分ける方法があります。
それは、真珠の珠と珠とのあいだから、糸が見えるかどうかを見る方法です。
真珠ネックレスの端を持って、ぶら下げてみてください。
正常な状態の糸であれば、珠と珠とのあいだからは、糸がみえない状態だと思います。
一方、組替えが必要なほど劣化した糸は、珠と珠との間に隙間ができて、中の糸がみえる状態になります。
この隙間に見える糸が5ミリ以上である場合は、糸替えをする必要があります。
糸替えをするべきか迷った場合、ぜひネックレスの端を持って、お試し下さい。
切れる前に糸替えを
通常の日本スタイルで組んであるネックレス(オールノット以外)の場合、
切れる前に糸替えをするということを心がけてください。
もしも着用しているときに切れてしまったら大変です。
あたりに散らばって、一生懸命拾ったとしても、何粒かは行方不明になってしまうでしょう。
また、真珠ネックレスは、厳密に順番を考えて組んであります。
一度バラバラになってしまったネックレスを組み直すのは、非常に手間がかかり、通常よりも時間と料金がかかってしまうかもしれません。
切れる前、早めの時期に糸替えをするようにしてください。
なお、オールノットで組んであるネックレスだと、切れても散らばらないので、切れてからの糸替えでも大丈夫です。
ただ、着けていきたいときに着けられないことになりかねないので、やはり早めの糸替えをおすすめします。
自分でネックレスを組み替える方法
業者に依頼せずに、自分で糸替えをすることも、不可能ではありません。
器用な方なら、ワイヤーを使って組替えることができるしょう。
しかし、糸で組替えることは、とても難しいです。
自分でワイヤーを使って組替えるには
ビーズなどが趣味の方は、ワイヤーを使えば、割と簡単に組み替えることができるかもしれません。
ただ、真珠の穴はビーズなどより穴が小さいので、ワイヤーアクセサリーで使える道具がつかえないこともあります。
(真珠は0.6ミリの穴が空いていることが多いです。)
ご自分でやる場合は、解説動画などでよく調べてから取り掛かることをおすすめします。
しかし、真珠ネックレスの組み替えは、後で説明するように、それほど高価ではないので、できれば業者に頼むことをおすすめします。
自分で糸を使って組替えるのは難しい
糸を使って自分で組替えることは、まったくおすすめできません。
業者で糸替えをする人たちは、何週間も組替えの練習をしてから、実際の商品を作るようになります。
自分で糸替えをすることは、とても難しいですし、コストに見合いません。
業者に頼むようにしてください。
どこで糸替えをしてもらえる?
デパート、宝飾小売店、真珠専門店などで糸替えをしてもらえます。
ただ、実際に糸替え作業を担当するスタッフが常駐している店と、常駐していない店とがあります。
糸替えスタッフが常駐している店は、1時間ほどで仕上げることが可能ですが、
糸替えスタッフが常駐していない店は、外注することが多いので、1〜2週間ほど時間がかかります。
また、常駐していない店の方が、糸替え料金が高価になる傾向があるようです。
デパートなどでは、糸替えスタッフが常駐していないことが多く、宝飾小売店では半々くらい。
真珠専門店では、ほぼ糸替えスタッフが常駐しています。
糸替え料金の相場
6-8ミリほどの大きさで、40-50センチほどの長さの場合、
真珠ネックレスの糸替えの相場は、3,000円ほどのようです。
長さが長ければ、料金が上がりますし、
小さい真珠であっても、手間がかかるので、料金が上がることが多いようです。
糸であっても、ワイヤーであっても、料金は大きくかわりません。
ただ、オールノットは高価になることが多いようです。
ちなみに、当店では、最安値範囲の、1,000円で糸替えを承っています。
(実店舗に持ち込み頂けるお客様のみのサービスです。)
糸替えのときにするべき3つのこと
糸替えで業者に持ち込むのであれば、やっておきたいことが3つあります。
クリーニングをしてもらう
真珠のネックレスには、珠と珠とのあいだなどに、普段のお手入れでは手の届きにくい汚れがたまります。
糸替えのとき、普段ではできないクリーニングをしてもらいましょう。
また、長年使い続けたパールネックレスであれば、
真珠科学研究所が開発したパールリフレッシャーという器械で、全体的に磨きをかけ、きれいにしてもらうこともできます。
パールフレッシャーを持っている業者は少ないですが、可能なようであればやってみるのも良いと思います。
長さが合わなければ調整してもらう
ずっと使ってきたけど、なにか長さがしっくりこない。。。
そんなときは、長さを調整してもらえないか相談してみましょう。
短くすることは、珠を抜いて組み替えるだけなので、簡単にできます。
長くするためには、似たような色の真珠を集めて足す必要があります。 有料で時間もかかりますが、専門店であればやってもらえると思います。
金具交換するべきか見てもらう
留め金(クラスプ)の着け外しが難しい。。。
もしかしたら、古いタイプの留め金(クラスプ)を使っているせいかもしれません。
新しいタイプの留め金(クラスプ)への交換も、3,000円程度から可能ですので、一度相談してみて下さい。
留め金(クラスプ)の多くはシルバーでできています。
真珠ネックレスは真珠部分が主役で、留め金(クラスプ)はときどき交換する前提です。
長年使った留め金(クラスプ)を交換することで、真珠ネックレスも生まれ変わりますので、
もし予算に余裕があるなら、検討してみて下さい。
アフターメンテナンスできる店で購入しよう
以上、真珠ネックレスの糸替えについて説明してました。
真珠ネックレスは、定期的に糸替えをして、クリーニングや調整をする必要があります。
デパートや専門店などに持ち込んでメンテナンスしてもらうこともできますが、
料金も掛かりますし、いつも気持ちよくメンテナンスしてもらえるとは限りません。
真珠ネックレスは、買ったお店でメンテナンスしてもらうことが基本だと思います。 買ったお店であれば、多くは無料ですし、気持ちよくメンテナンスに応じてくれるでしょう。
もしこれから真珠ネックレスを購入するのであれば、アフターメンテナンスをしてくれるお店を選びましょう。
以上、ご参考になれば幸いです。
アメリカ宝石学会公認鑑定士(GIA.G.G.)
Gemological Institute of America Graduate Gemologist
ダイヤモンド卸、宝飾メーカー勤務を経て、創業60年の老舗、井上真珠店に勤務。現在は暖簾分けされた宇和島イノウエパールの代表。
パール専門小売店にて「お客様一人一人と向き合う接客」をモットーに、お客様の希望や体型をヒアリングの上、仕入れから最終仕上げまでを行い、累計1,000本以上のネックレスを販売してきました。