花珠真珠とは?その条件と、オーロラ花珠・花玉真珠の意味
花珠真珠とは、アコヤ真珠のなかで、鑑定機関の厳しい基準を満たした最高品質の真珠に与えられる呼称です。読み方は「はなだま」。
真珠の「種類」ではありません。アコヤ真珠・黒蝶真珠・白蝶真珠が種類で、花珠はそのアコヤ真珠のなかの、品質による区分です。
具体的には、てり(輝き)が最上位で、ほぼ無キズ、かたちは真円、真珠層が厚く巻いていて、色はホワイト系。この5つをすべて満たしたものだけが花珠と呼ばれます。
ただし、この言葉に法的な定義はありません。誰でも名乗れます。
そこでこのページでは、「花珠とは何か」だけでなく、なぜ鑑定書を見る必要があるのかまで、順を追ってご説明します。
値段から先に知りたい方は、花珠ネックレスの価格一覧(全7ランク23通り)をご覧ください。
目次
花珠とは — 言葉の由来と、鑑定書が生まれるまで

もとは、漁師の言葉だった
「花珠」は、もともと養殖業者や漁師のあいだで使われていた言葉です。
語源は「端珠(ハナダマ)」。浜揚げした真珠をハナ(端)・ドウ(胴)・スソ(裾)・ドクズ(屑)の4つに選り分けたときの、いちばん上を指しました。
そもそもは”端珠”が語源と言われる。三重県の漁民の間では”漁のハナ”、すなわち漁の一番乗りという意味で”端”の字を使い、ハナを競う時に使われたという。いずれにしてもトップクラスという点では昔も今も同じではあるが。
『ニッポンの真珠がいちばん美しい』 小松博 いなとみのえ 著 繊研新聞社
「端」がトップを意味し、それが転じて、花の美しさを連想させる「花珠」という表記になったと言われています。
なお「花玉真珠」と書かれることがありますが、これは誤記です。正しくは「花珠」。よく間違われますのでご注意ください。
国が真珠を検査していた時代(1952〜1998)
かつて日本には、国が真珠の品質を検査する制度がありました。
1952年、東京と神戸に国営の真珠検査所が置かれました。
輸出される真珠はすべてここで検査を受け、巻き・形・つや・キズ・染み・仕上げの6項目で「上級」と「下級」に分けられます。
そして1957年からは、業界の取り決めによって、「下級」の真珠は欧米など主要25か国へ輸出できないことになりました。
国が等級をつけ、業界が下級品を止める。この二段構えで、日本から出ていく真珠の質が守られていたわけです。
その「下級」の定義は以下のようなものです。
- 真珠層が薄く、核が透けて見える薄巻き珠。
- 染めむらが著しく、表面に染料が浮いた染め珠。
- 漂白のかけすぎで亀裂や剥離が生じた荒れ珠。
薄い巻き、行き過ぎた加工、ごまかしの色。これらは「日本の真珠として出してはならないもの」でした。
なぜ、国は検査をやめたのか
この仕組みが、1990年代に終わりを迎えました。
きっかけは、国全体の規制緩和です。1997年に眼鏡やおもちゃなどの輸出検査が廃止され、真珠の国営検査も、この流れのなかで廃止が決まります。
そこに、真珠ならではの事情が重なりました。中国産の安価な淡水真珠の普及です。
中国産の安価な淡水真珠が世界に広がり、大きな市場となっていた。けれど日本は「上級品しか輸出できない」ので、その市場には出ていけない。
規制を外せば、低品質だが安価な真珠を世界の市場に出していける。1998年3月の国会で、水産庁長官はこう説明しています。
従来は上級品だけの輸出ということであったわけですが、今後はこの分野にも我が国としても積極的に市場に対応していくことができるということを考えますと、これが一つの業界のメリットにつながるのではないか
水産庁長官(1998年3月31日 衆議院農林水産委員会)
1997年、まず「下級品を輸出しない」という業界の取り決めが廃止されます。
下級品も出せるのなら、真珠に等級をつける意味もありません。翌1998年の12月末、東京と神戸の真珠検査所は46年の歴史に幕を下ろしました。
これは失うものも、承知のうえでの選択でした。同じ日の答弁で、長官はこうも述べています。
下級品の輸出によりまして我が国の真珠の声価が低下するおそれもあるというデメリットもあるわけでございます。
当時、真珠の品質を測る事実上唯一のものさしであった、国の検査基準が、この時に無くなったのです。
空白を埋めたのが、民間の鑑定でした
「真珠の声価が低下する」——長官が挙げたこの懸念は、じつは制度が終わる前から現実になりつつありました。
1990年代には、質の低い真珠までが「花珠」の名で売られるようになります。
「先達たちが作ったこのきれいな言葉が、悪貨が良貨を駆逐するように、その真意と共に消えてしまう」——のちに花珠の基準をつくることになる小松博氏は、著書『ニッポンの真珠がいちばん美しい』(繊研新聞社)で当時をそう振り返っています。
ミキモトの研究室に24年つとめ、研究室長も務めた小松氏は、1991年に真珠科学研究所を設立。
2000年に、真珠では世界で初めてとなるグレーディングシステムを発表します。
このシステムは、テリ・まき・キズ・かたちの4つの要素それぞれに評価段階を設け、すべてが最高位の範囲に入るものを最高品質と定めました。
同時に、「花珠」という言葉の使い方も決められています。
使えるのはアコヤ真珠だけ。そのなかでもホワイト系にかぎる、という定義です。
なお「オーロラ花珠」という鑑定書の名称が使われ始めたのは2009年からで、それ以前は単に「花珠」と呼ばれていました。
また、検査制度の廃止が国会で決まった1998年3月、株式会社真珠総合研究所が設立されます。
創業者の武内恭一氏は、御木本真珠から東京真珠へ移って専務を務め、浜揚げの仕入れから加工工場、研究室までを40年近く見てきた実務家でした。
国が引いていた線が消えた場所に、民間の鑑定が入った。「花珠」が広く知られるようになったのは、この流れの先です。
なぜ、鑑定書が必要なのか
いま「花珠」に、法的な定義はありません。誰でも名乗れます。
国が引いていた線は、もう引かれていません。
そのうえ真珠には、ダイヤモンドのような共通言語がありません。
ダイヤモンドには4C——カラット・カラー・クラリティ・カットという世界共通のものさしがあります。専門家でなくても、書かれた等級から品質と値段の対応をたどることができます。
真珠には、それがありません。
てりも巻きも、見て触って比べた経験がなければ判断のしようがない。分からないものは、売る側が値段を決められてしまいます。
その疑いは、当店にも向けられて当然のものです。私たちも同じ業界にいます。
だから当店は、自社の基準で選んだ真珠を、必ず第三者の鑑定機関にも通します。
1965年の創業から60年、真珠を見てきた目には自負がありますが、その目が正しいことを、自前では証明できないからです。
花珠の鑑定書は、真珠にとっての4Cの代わりです。完璧なものさしではありませんが、いま手に入るなかでは、もっとも客観的な手がかりになります。
花珠鑑定書の見方
花珠と認められる条件

鑑定書の花珠は、次の5つをすべて満たした真珠です。
- てり(輝き):極強〜強。真珠のなかで最上位の輝きです
- キズ:ほぼ無キズ
- かたち:真円(まん丸)
- 巻き(真珠層の厚さ):片面0.3mm以上。真珠科学研究所は0.4mm以上を基準にしています
- 色:ホワイト系
ネックレスの場合は、1粒ずつの品質に加えて、50粒前後をつないだときの「揃い」も見られます。
1粒ずつなら合格でも、連にすると色や大きさが揃わず、花珠にならないことがあります。
2つの花珠鑑定書 — オーロラ花珠と、花珠
信頼できる花珠の鑑定書は、真珠科学研究所と真珠総合研究所の2つだけです。
真珠科学研究所が発行するのが「オーロラ花珠」。「真珠の下半球に現れる反射の干渉色(光彩色)」を「オーロラ効果」と呼ぶことにちなんだ名称で、他の鑑定機関がこの呼び名を使うことはありません。

真珠総合研究所が発行するのが「花珠」です。

並べて比べると、てりはオーロラ花珠のほうが強く出ます。花珠の基準が「極強〜強」なのに対し、オーロラ花珠は「極強」だけを合格とするからです。
ただし、どちらもほぼ無キズで真円、てりも十分に強い真珠です。その差に気づかれる方は、多くありません。
違うのは、2つの機関で、真珠の見方そのものが違うこと。
真珠科学研究所は品質を数値にして判定し、真珠総合研究所は人の目による評価を重視します。
とくに「てり」は、真珠科学研究所では真珠を撮影し、数値にしたうえで判定しています。
人の目なら「どちらもきれい」で済んでしまう差が、数値にすると差として出てきます。
厳しいのは、てりだけではありません。キズも同じです。
真珠には、普通の光では見えない内部のキズがあります。当店の見立てでは、真珠科学研究所はこの見えないキズにも厳しく、そのぶん合格しにくくなっています。
一方、人の目を重視するというのは、基準がゆるいという意味ではありません。
経験を積んだ目が、実際に身につけたときにどう見えるかを判断している、ということです。
どちらが正しいという話ではなく、見ている粒度が違う。細かく見るぶん、オーロラ花珠のほうが基準は厳しく、価格も高くなります。
その価格差が実際にどれくらいなのかは、花珠ネックレスの値段で、当店の実売価格を挙げてご説明しています。
選んではいけない花珠
花珠の鑑定書を発行する機関は他にも沢山ありますが、ほとんどが信頼のおけない鑑定書です。
「花珠」という言葉は誰でも使えます。怪しい鑑定機関は、どんな低品質の真珠にも「花珠」の鑑定書を発行してしまうからです。
ダイヤモンドなどで有名な鑑定機関であっても、「花珠」の品質は信頼できません。
真珠は生き物が生み出す宝石であり、鉱物であるダイヤモンドとは構造が大きく違うからです。真珠の鑑定書を発行するのは、真珠専門の鑑定機関でなければいけません。
花珠を選ぶなら、真珠科学研究所と真珠総合研究所、2つの花珠の中から選ぶようにしてください。
無調色について
同じ花珠であっても、調色(着色)と無調色という違いがあります。
特殊な染料を、核と真珠層の間に染み込ませることで、真珠の実体色をピンク系にすることができます。これが調色です。
調色と無調色ではピンクの生まれ方が違うので、見た目にも差が出ます。
- 調色(着色)した真珠は、ひとめで分かる華やかなピンクです
- 無調色の真珠は、うっすらと輝く穏やかなピンクです
調色は伝統的に行われてきた一般的な加工ですが、過度に色付けした真珠が問題になったこともあり、近年はこだわりを持って無調色を選ばれる方が増えています。
無調色のほうが希少なので、値段は高くなります。
見分けるのは難しく、厳密には鑑定書を見るしかありません。
調色が一般的なため、調色であることはあえて表記されないのが通例です。
- 表記なし → 調色/着色
- 無調色と表記 → 無調色/ナチュラル
色の選び方については、ピンクパールか、無調色かで詳しくご説明しています。
当店の花珠について
ここまでを踏まえて、当店の立場をお伝えします。
私たちのやり方は、二段構えです。正当なルートから仕入れた真珠を自社の基準で選び、そのうえで第三者の鑑定機関に審査してもらう。
自社の基準だけでも、鑑定書だけでもありません。両方を通ったものだけを扱います。
参照するのは、真珠科学研究所と真珠総合研究所の2機関にかぎっています。名前の似た鑑定書は他にもありますが、当店の基準には使いません。
真珠総合研究所の「準花珠」も扱っていますが、これを「花珠」には含めていません。
名前が紛らわしいからこそ、明確に区別します。
そして、同じ鑑定書ランクなら、同じ価格にしています。
同じランクの中でも、一本ごとの仕入れ値には幅があります。以前はその幅をそのまま値段に反映していました。
けれどお客様から見れば、同じランクの真珠です。値段が違う理由を私自身がうまく説明できないことがあり、ランク内では揃えることにしました。
なお、当店が扱う花珠は無調色が標準です。
花珠の上と下のランク

花珠は上位のランクですが、最上位ではありません。上にも、すぐ下にも選択肢があります。
2つの鑑定機関のランクを並べると、全体像はこうなります。
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上を見るなら、オーロラ天女。オーロラ花珠に合格した真珠のうち、てりが特別に美しいものだけに与えられる称号です。キズ・巻き・形の基準はオーロラ花珠と同じで、違うのはてりの一点だけ。
別の系統として、ロゼシリーズ。「小さなキズは受け入れるかわりに、てりの強さで選ぶ」という考え方のグレードです。
下を見るなら、準花珠。「花珠落ち」とも呼ばれます。花珠の検査を通らなかった真珠、という意味で使われる言葉ですが、範囲が広すぎて曖昧です。
花珠より下のどのランクなのか、業者の自己申告ではなく、鑑定機関のランク付けを参考にしてください。真珠総合研究所であれば、花珠より下にも「準花珠」「良質真珠」などのランクがあります。
ランク全体の序列と、鑑定書からランクを読み解く方法は、下記にまとめています。
Q&A
ここからは、よくお客様から聞く質問にお答えしていきます。
花珠にも、探したら小さい傷がありましたが?
あります。キズにいちばん厳しい真珠科学研究所の花珠でも、細かく探せば小さなキズは見つかります。
ネックレスには50個ほどの真珠を使います。指輪に使うような完全に無傷の珠を50個そろえることは、現実的ではありません。これは有名ブランドのネックレスでも同じです。
ただ、2機関の花珠であれば、身につけた状態で分かるようなキズはほぼありません。
花珠の基準は「1粒を拡大して無傷か」ではなく、「1本として美しく見えるか」で引かれているとお考えください。
キズそのものについては真珠の傷についてで解説しています。
巻きの厚い方が良い花珠なの?
ある程度まではそうですが、厚ければ厚いほど良い、ということはありません。
花珠の巻きの基準は、真珠総合研究所が片面0.3mm以上、真珠科学研究所が0.4mm以上です。
美しさという点では0.3mmあれば十分で、真珠科学研究所は余裕を持たせて0.4mmに置いているものと思われます。
いずれにせよ、2機関の花珠に認定されていれば巻きは合格点です。それ以上の数値にこだわる意味は、あまりありません。
てりについては真珠のてり(照り)とはをご覧ください。
タヒチ黒真珠や南洋真珠にも花珠はあるの?
ありません。「花珠」はアコヤ真珠だけに使う言葉です。
基準を定めた真珠科学研究所も、「この言葉はアコヤ真珠のみに使うこと」と明記しています。
ごく稀に、海外産の大粒の真珠を「花珠」と呼ぶ例を見かけますが、正しい呼び方ではありません。
10mmの花珠はありますか?
日本産アコヤ真珠の最大サイズは、10mmから11mm程度です。
大粒の真珠ほど高品質になる確率は低いので、10mmを超える花珠はめったにありません。
サイズ選びについては真珠の大きさについてをご覧ください。
同じ花珠でも指輪とネックレスでは品質が違うの?
リング用の花珠のほうがキレイです。ネックレス用とリング用(一粒ネックレス用)では、評価基準が少し違うからです。
ネックレスは50個ほどの真珠を総合的に見て判断します。
一方リング用は1つだけですので、あらゆる方向から見て欠点がないかを判断します。
リング用(片穴)は特別であり、ネックレス用(両穴)より美しいことが普通で、判断基準も厳しくなっているのです。
参考文献
喰代伸之「真珠産業の振興 ― 真珠振興法制定までの経緯と取組について ―」『立法と調査』2016年8月 No.379(参議院事務局企画調整室)/日本真珠輸出組合「品質検定」/水産庁「真珠養殖をめぐる情勢について」令和5年7月/武内恭一『真珠の加工 仕入れから販売まで』真珠新聞社 1994年/小松博・いなとみのえ『ニッポンの真珠がいちばん美しい』繊研新聞社/『真珠事典 真珠、その知られざる小宇宙』真珠科学研究所 2015年
では、実際にどの花珠を、いくらで買えばいいのか。サイズや長さの選び方、冠婚葬祭での使い方も含めて、当店の全7ランク・23通りの価格とあわせてこちらにまとめています。
イノウエパールの花珠・天女ネックレスを見る
創業1965年・60年以上の目利きが厳選した花珠のみを取り扱っています。すべて鑑定書付き、無調色が標準です。松山市の実店舗でもご覧いただけます。
松山市の実店舗にもお越しいただけます。
米国宝石学会(GIA)公認鑑定士・Graduate Gemologist(G.G.)
真珠科学研究所認定 テリマスター/真珠C・E(クリーニング&エステ)マスター
株式会社Inoue Pearl(イノウエパール)代表。
ダイヤモンド卸・宝飾メーカー勤務を経て、1965年創業の真珠専門店「有限会社井上真珠店」に参画。2016年、井上真珠店松山店からのれん分けして独立した。
生まれも育ちも愛媛県宇和島市。宇和島で真珠養殖を始めた祖父の代から続く、真珠ひと筋の家に育った。
厚巻き・強てりを品質の原則とし、自社基準を満たさない真珠は取り扱わない。ほぼ全商品に真珠科学研究所または真珠総合研究所の鑑定書を付与。無調色真珠をメインに扱う。累計1,000本以上のアコヤ真珠ネックレスを自社にて選別・販売してきた。
実店舗は愛媛県松山市。公式オンラインショップ(https://shop.i-pearl.co.jp/)でも販売中。








